学校法人東北学院

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年頭所感-佐々木哲夫院長-

2019年01月04日

この建物全体は組み合わされて成長し…(エフェソの信徒への手紙 2章21節

 
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院長 佐々木哲夫


 新年あけましておめでとうございます。2019年が皆様にとって祝福豊かな年となりますようお祈り申し上げます。

学校は人
 組織を構成する最小単位は人です。しかし、奉職する組織の目標と働き人の自己達成目標とが一致するかは微妙です。ですから、組織は、さまざまな面において存立の理念や職務目標を再帰的に提示し、組織全体の主体的参加を求めます。
 東北学院がキリスト教学校として開院した年(1891年)に、押川方義初代院長は新講堂に全生徒を集め、①東北学院は、「商業学なり、法学なり、文学なり、理学なり、今日の日本子弟に必要な学科」を、②「基督教徒が基督教主義をもって教育する」との講演を行いました。今日、その方針は「東北学院中長期計画 」にも継承されています。計画の中で「ミッション」が土台として、また「ビジョン」が目指すものとして図示されています。理念が組織の土台であると同時に目標にもなっており、東北学院のあり方を導くものです。すなわち、キリスト教学校である東北学院は、子弟の育成のために必要な学科を教授するとともに、キリスト教の価値観に基づく徳育を施し、よって子弟の全人的成長を期する教育機関であることが示されています。そこでは構成員による目標の了解と主体的参与が必要とされています。

全員の協同
 「キリスト教学校である指標は何か」との問いは、繰り返し議論されてきた提題です。たとえば、「寄附行為のキリスト者条項」「建学の精神」「学校礼拝」「キリスト教学や聖書科の必修授業」「創立以来の歴史」「キリスト者教職員の存在」などが挙げられます。最後の項目は殊に重要です。
 シュネーダー第2代院長は、1933(昭和8)年の東山荘でのキリスト教学校教育同盟夏期学校で講演を行い「多くの教師はキリスト者ではありません。あるいは、たとえキリスト者であっても、往々にして、その学校の精神的目的に深い興味を持ちません」と語り、教育目標を達成するためには「キリスト者の教育者が非常に苦心して努力しなければならない」ことを指摘しています。他方、東北学院臨時教員会(昭和6年)においてシュネーダー院長は「基督教主義学校の危機に際して東北学院の使命を惟ふ」の演題で講演を行い、「真の基督教学校は其の教員が衷心から互いに協力し、殊に中心的責任者と協力し、又凡ての事に協力し、殊に宗教的活動に相協力する学校である」と語っています。協同は、時代を超越する「組織の要件」です。協同は、東北学院の職員公募要件に「キリスト者もしくはキリスト教に理解ある者」の条項があることや、寄附行為前文に「東北学院は創立以来、本法人に所属する各教育機関において一般の教育・研究活動と共に福音主義キリスト教に基づく宗教教育を一貫して行ってきた。今後ともそれぞれの教育機関は、正規の学校行事としての礼拝と正課必修としてのキリスト教教育を不変のこととして実施していくものとする」との理事会宣言が付されている理由でもあります。

内観による発展
 戦略の本質として挙げられる項目、換言するならば、失敗しないための要件に「目標の明確化」があります。目標の二重性や不統一や不明瞭などのために目標が十分に把握されないならば、実力ある人の集合体であっても組織の成功は不明です。
 ところで、成功談を聴衆全員に適用することは難しいですが、他方、失敗談は誰にでも起きる可能性があるものです。ですから失敗談は傾聴に値します。旧約聖書に記載されているイスラエル王国の初代王サウルは失敗者でした。彼は、謙遜な性格で統治能力もあり立派な容姿を備えていた人物で申し分のない王様に映りました。確かに、彼の王朝の滑り出しは順風満帆でした。しかし、サウルは、神の支配を体現するという王の本質的使命をしばしば見失います。たとえば、物欲を優先させたり、民衆の評判に流されたり、嫉妬心のゆえに平静さを失うなどの振る舞いが記載されています。サウルは、やがて人生の下り坂を転げ落ち自死の最期を迎えます。サウルだけでなく、土台と目標を忘失したイスラエル王国は、その後、北王国と南王国に分裂し、時代こそ異なりますが、それぞれ破滅への道を歩みます。理念の明確化と主体的参加は、組織を活性化するだけでなく、その発展をも左右するのです。
 東北学院の2019年の歩みが主の祝福によって豊かに導かれますようにと祈ります。