学校法人東北学院

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年頭所感 ―佐々木哲夫院長―

2016年01月04日

ミッションに根ざした樹木

 
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   院長 佐々木哲夫


 新年明けましておめでとうございます。平成28(2016)年が皆様にとって祝福豊かな年となりますようお祈り申し上げます。

樹木と大地
 昨年策定された「東北学院中長期計画(TG Grand Vision 150)」は、教育共同体東北学院を持続的に発展させるために定められたものです。構想全体の説明のために樹木の形をした模式図が付されています。樹木中央部の枝葉の部分は、各校の「実行計画」や「戦略」を示しており、「財政計画」という幹によって支えられながら頂上部の「ビジョン」へ向かっています。樹木全体は、「ミッション」と記された大地に根ざしています。「ミッション」とは、「建学の精神」「教育の方針」「スクール・モットー」などを指しての総称です。そのような模式図です。

院長の職務
 昨年の4月に院長職を拝命した時の挨拶として「東北学院は、『若者の心を育てる教育』をこれまでめざしてきました。すなわち、聖書の言葉『主を畏れることは知恵の初め』(箴言1章7節)に示されているように、礼拝を重んじる雰囲気の中で実践される教育です。…そのような東北学院のために働きたいと願っています」と記しました。9カ月が経過し、新たな1年間という時空の到来を眼前にするとき、託されている使命に適う働きをしてきたか、また、これからしようとしているかについて自己吟味するように促されます。
 東北学院寄附行為は、院長の職務について「学校の教育を総理する」と定めています。条文は簡潔ですが、そこに含意されていることは「私立キリスト教学校である東北学院の教育が建学の理念に基づいて遂行されるように適切な連携を図ること」であると解しています。換言するならば、東北学院という樹木がミッションという大地にしっかりと根ざして枝葉を大きく成長させるために適切な連携を図ることであると解しています。

ミッションに基づく教育
 「ミッション」は、役割や任務などを意味する「使命」と邦訳される言葉です。邦語の使命ではなく英語のミッションには固有の響きを感じます。ミッションの語源であるラテン語ミッテレが有する意味「遣わす」の響きです。例えば、福音宣教のために遣わされた者をミッショナリー(宣教師)と呼ぶ場合もそうです。宣教師のホーイやシュネーダーたちは、東北学院の創立を神から託された使命と認識して仙台に遣わされたのでした。
 中長期計画は、東北学院のミッションの内容として「地の塩、世の光」「Life, Light, Love」をも挙げ、それが東北学院の存在意義(使命)であると説明しています。「建学の精神」や「若者の心を育てる教育」などの文言によって表現されてきたものと同じ東北学院の本質的価値観を示す言葉です。具体的には、次世代を担う若者に知識や技術や文化を伝承するだけでなく、東北学院教育の基本方針が「今後ともそれぞれの教育機関は、正規の学校行事としての礼拝と正課必修としてのキリスト教教育を不変のこととして実施していくものとする」と記している教育、すなわち、全人教育をめざしての教育を行うことを表現しています。

全人教育をめざして
 生徒や学生にとっての1年間は、身体の成長、知識の修得、環境への適応など増進著しいものがあります。そのような外側から観察できる自己でなく、自己自身しか覗き込むことのできない内なる自己の存在をも私たちは知っています。霊的な自己と言って良いかもしれません。内なる自己は、小さい時からあまり変わっていないように思われます。全人教育は、外側の自己だけでなく内なる自己をも全部ひっくるめた人間全体としての成長を図る教育のことです。それが東北学院に託されているミッションに基づく教育であると考えています。
 このような教育ヘの参与には、単なる忙しさ(business〔busy+ness〕)にではなく天職(vocation)に召されているような熱情を覚えます。三校祖をはじめとする多くの先達たちが東北学院の教育に人生をかけて参与し、それぞれに託されたいのちの走路を走り抜きましたが、そのような熱情です。創立130周年を迎える2016年の時空の到来を眼前にするとき、大地にしっかりと根ざして大きく枝葉を広げる樹木の姿を心に描きながら前進したいものと願わされます。