学校法人東北学院

理事長・院長室

理事長メッセージ

比類なき学校へ

理事長
理事長
原田 善教

前世紀の権威主義的国家の指導者による世界分割競争の再来を予感させるほど、世界は未だ危うい状況に変わりありません。分断される世界情勢のなか、いま私たちは教育において何ができるかを考えるとき、フランスの詩人ルイ・アラゴンのストラスブール大学の歌のフレーズが、すなわち「教えるとは 希望を語ること 学ぶとは 誠実を胸に刻むこと」が想起されます。一刻も早く「地には平和」が訪れることを願います。

地球環境の激変は異常な気候変動となって現れています。我が国の昨夏の異常な猛暑を想起すれば、地球温暖化問題がフェイクではないことは明らかです。また、2026年は東日本大震災から15年を迎えます。2年前には能登半島地震が、昨年には八戸で大きな地震がありました。アメリカのロサンジェルスでの大規模な山林火災、大船渡での大規模な山林火災、大分で大規模火災が起きました。さらに、熊も人里に多く現れ深刻な被害をもたらしました。自然環境の激変と地球の再野生化に思いをいたし、COP30をふまえて、いま我々は自分ごととして環境問題に向き合わなければならないと強く思います。

また、我が国における少子化は予想を上回るスピードで進んでいます。2024年の出生数は統計史上初めて70万人を下回り、68万6000人となりました。2024年の18歳人口は106万人でしたので、2042年の18歳人口は今より38万人弱減少します。ところが、2025年12月に朝日新聞が2025年の出生数の推計を発表しました。それに拠れば、2025年の出生数は66万8000人と推計されています。したがって、2043年の18歳人口はいまより40万人減少します。さらに東北地方の少子化は全国平均を上回って進んでいますので、東北地方の私立学校の多くは淘汰される可能性が高いと予想されています。文部科学省によれば2040年の宮城県の予想進学者数に基づく私立大学の定員充足率は、2021年と比較して62.5%になると予測されています。東北6県では60.64%です。驚くべきスピードで減少しています。まさに私立学校危機の時代です。

文部科学省も2025年2月に発表された「我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築」(答申)(いわゆる「知の総和答申」)以降、さまざまな会議体、例えば「地域大学の振興に関する有識者会議」、「2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学のあり方検討会議」、質向上・質保証システム部会の下での「教育・学修の質向上に向けた新たな評価のあり方ワーキンググループ」などを設置し、矢継ぎ早に施策の実施に向けて動き出しています。具体的には、規模適正化のために学校法人の経営指導の強化に積極的に乗り出し、高等教育機関(私立大学)の再編・統合に向けて進んでいます。他方で、地域から必要とされる人材育成を担う地方大学の重点支援への転換を進め、先の「地域大学の振興に関する有識者会議」において「地域構想推進プラットフォーム」の構築を議論しています。この施策が人口減少による大学空白地帯を生じさせないものとなるかは未だ見通すことはできません。この「知の総和答申」の「おわりに」では、「18歳人口が急激に減少するのは2035年頃である。あと10年あるではなく、たった10年しかない」と危機意識を強く持って改革の実行にあたらなければならないと強調しています。このころはまさに東北学院創立150周年を迎えるときです。しかし、そのときから改革を始めたのでは遅きに失したことになります。18歳人口がやや横ばいしている時期の、2029年までの4年間が「大学改革の勝負期間」だと言われています。

こうしたますます先の見通せなくなった危機の時代において、東北学院にはその羅針盤として中長期計画TG Grand Vision 150があります。2026年度からいよいよ第Ⅲ期中期計画に入ります。これまでの10年の取組を振りかえりつつ、次の10年を考え行動するときです。DX化の進展やAIの導入が人的資源の転換・有効活用を促し、新たな施策が展開されることになります。学習者目線に立った教育の充実と産官学金連携を基盤とする地域人材の育成・供給拠点としての東北学院に、これまでとは異なる新たな東北学院の姿を見ることができるようにならなければなりません。それこそが「地域社会から必要とされる学校」、つまり「比類なき学校」になるということです。

大学では、2025年リクルート進学総研調査によれば東北エリアで高校生が志願したい大学1位となりました。五橋キャンパスの開設によって「交通の便が良い」ことが評価されてのことです。今後はそれ以上に評価項目としての「学び」(教育内容・方法)が高評価されることを期待しています。

学習者目線での学びを重点化するために、教学改革として4つの柱、グローバル教育、地域連携教育、AI・IT教育、アントレプレナーシップ教育が重要です。各拠点を整備しそれぞれが連携しながら地域社会とも連携し、地域社会に有為な人材を供給する基盤を構築したいと思います。地域社会の人々のリカレント・リスキリング教育にも大学院を活用して取り組む必要があり、すでに始まっています。学部大学院一貫教育の取組も進め、知(地)の拠点である大学、知的創造機関としての大学の責任を十二分に果たしていかなければなりません。そのために土樋キャンパスと五橋キャンパスとの間に新棟を建設することにしています。有機的なキャンパス整備によって一層魅力あふれる知(地)の拠点となることを期待しています。

中学校・高等学校では、毎年夏のオープンスクールで来校者アンケートをとっています。その結果から、施設・設備のよさや学習指導の充実が上位にあり、志願者獲得の源泉となっています。榴ケ岡高等学校でも大学泉キャンパスに移転したことによって施設・設備の優位性が際立ち、志願者の獲得に有利に働いています。今後は、両校とも教員相互の研修を通じて教育内容・方法を一層充実させるとともに、東北学院の設置校として中高大連携を基盤に、AI・探究学習の展開を進めてまいります。

幼稚園では、少子化の影響を最も早くそして強く受けています。その中でも教育機関としての強みを発揮して存続を図っています。とりわけ非認知能力の向上に向けた取組を様々なイベントを通して行っています。幼稚園との中高大連携は東北学院ならではの世代間交流の一例です。キリスト教教育は幼児教育でこそ十全に行われるという意識を持って幼稚園運営にあたってまいります。

以上のように、東北学院創立140周年、土樋キャンパス開学100年を迎える2026年度も各設置学校において教学・経営改革を進めてまいります。変革を怠れば停滞が、現状に安住すれば滅びが待っています。リスクを恐れず積極果敢に挑戦し、本院の拠って立つ基盤である建学の精神・スクールモットーに絶えず立ち返りながら、まっすぐに歩んでまいります。引き続き皆様のご支援とご協力をお願いいたします。