宗教部長
原田 浩司
東北学院の「建学の精神」は「福音主義キリスト教の信仰」に基づく人格教育であり、それを「LIFE LIGHT LOVE(命・光・愛)」の三語に集約し、スクールモットーとして掲げています。この言葉は、本学院を創設し、その後の発展に寄与した二人の校祖(W.E. ホーイ先生とD.B.シュネーダー先生)の出身地であるペンシルベニア州の合衆国キリスト教団(旧ドイツ改革派教会)が大切にしてきたもので、両先生はこの言葉を胸に刻んで本学院での教育に励まれました。1886年の創立から数え、いよいよ150周年へと向かう本学院は、創立者たちの精神を受け継ぎながら、五橋キャンパスの開業に併せて改めて「LIFE LIGHT LOVE」を建学の精神を象徴し、キリスト教の信仰に基づく本院の人格教育の指針となる大切な言葉として再確認して、日々の教育活動に取り組んでいます。
本学で学ぶ学生一人一人は、知識と教養、創意し工夫できる力を身につけると同時に、この「建学の精神」によって心が滋養され、「内なる人」として内面から練磨されることをとおし、明確な学びの方向と人生の目標を得て、隣人愛の実践と平和な社会形成に取り組むよう期待されています。聖書には「私たちは皆、知識を持っている、ということは確かです。しかし、知識は人を高ぶらせるのに対して、愛は人を造り上げます」(コリントの信徒への手紙一8章1節[聖書協会共同訳])との使徒パウロの言葉があります。本学で学ぶ者も教える者も、それぞれの確かな知識に基づいて公正に判断し行動することが求められます。しかし、創世記に記されるアダムとエバの堕罪物語が示しているのは、「善悪を知る知識」を手にした彼らが、その知識をもって行ったことが「自己正当化」と「責任転嫁」でした(創世記3章)。人間には知識が具わることだけでなく、その知識をどう用いるかが問われます。その知識を用いる一人ひとりの内なる心に届く人格教育が重要です。「愛は人を造り上げます」との聖書の言葉が示すように、「愛LOVE」は本学の建学の精神を象徴する「LIFE LIGHT LOVE」の一つであり、キリスト教の人格教育において不可欠です。本学で学ぶ一人ひとりは、高度な知識や各領域の専門性を学修し、習得するだけでなく、「LIFE LIGHT LOVE」に象徴されるキリスト教精神を理解し、この世界と地域社会で豊かに生きる目的を持つことが大切です。ただ自分の利益や繁栄だけを願うのではなく、「隣人愛」としてキリストが示されたように、人々の平和や福利のためにも生きる生き方が求められます。
新型コロナウィルスの規制が解かれた今日の世界は、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル軍によるガザ侵攻、あるいは米国の大統領選挙など、民族や国家のレベルに至るまで、人間相互の関係性の「分断」が顕著に表れ、しかもその溝は大きく深まっています。そうであればこそ、ますます相互理解と相互交流、多用性の受容、環境との共生、自由で平和な社会を形成することが、今の時代に求められています。本学院では、日々の礼拝と聖書の学びを通して「LIFE LIGHT LOVE」の精神を学生一人ひとりが会得し、自らの人格を磨いて、地域へ世界へと貢献していけるように願っています。